介護保険制度という時代を走り抜けて、そして今
- Yuichi Terauchi
- 2月24日
- 読了時間: 4分
いよいよ、2月一杯で介護業界と本当のお別れの時が来ました。
事業を譲渡してから一年半。後任が決まるまで治療院と二足のわらじで機能訓練指導員として関わってきましたが、ここで一区切りです。
これからは治療院一本に、心も体も注ぎます。
2000年、介護保険法が施行されました。
ある社会福祉法人に頼まれ機能訓練指導として嘱託していたことがありました。介護保険が始まった最初に見た現場は、理想とはかけ離れていました。
体のいい人寄せのマッサージ付どんちゃん騒ぎ入浴施設でした。
名ばかりの機能訓練、本来介護支援を必要とする方が隅に追いやられる光景。
腹ただしさと同時に、「自立支援とは何か」「機能訓練はどうあるべきか」を真剣に考えるようになりました。
我々の業界にも、「鍼灸マッサージ師の新たな挑戦」「我々の技術と資格を介護保険の世界で」という風が吹いておりました。
「自分ならこんな施設を作りたい」と思うようになり、2003年、私は介護の世界へ入りました。
そうして始めた小規模・機能訓練特化型デイサービス。
この地域では前例のない挑戦でした。
社会福祉法人が中心の土地で、新参者の小さな事業所。
がむしゃらに走り続けました。
その道のりは、決して平坦ではありませんでした。
制度改正、利用者の増減、資金繰り、スタッフの悩み…。
幾度となく壁にぶつかりました。
そのたびに看護職員として一緒に働き支えてくれた、妻の存在は大きかった。
私が前だけを見て走れるのは、後ろを守ってくれる人がいたからです。
言葉にしきれないほどの苦労をかけたと思います。それでも黙って支えてくれました。
そして、創業当初から共に歩んでくれたスタッフたち。
小さな事業所だからこそ、家族のような距離感で、喜びも葛藤も分かち合ってきました。
衝突もありました。涙もありました。
それでも同じ方向を向いてくれたことに、どれほど救われたか分かりません。
数年前、若い方から言われた事がありました。
「もう老舗ですよね」と。
あの必死だった日々が、いつの間にか“歴史”になっていたのだと、胸が熱くなりました。
制度は変わり、時代も変わりました。
小規模単独経営は厳しさを増し、承継か、拡大か、廃業か――。
数年間、そのことで頭がいっぱいでした。
そんな中、ご縁があり、若い経営者へ事業を託すことができました。
2024年8月、譲渡。
この時は、肩の荷が一気に下りた解放感でいっぱいで、寂しさなど一抹もなかったのですが、それがこの度、「ここに来ることはもうないんだな」と思うと、23年間の思い出が静かに押し寄せました。
床や壁の傷。
擦り切れた畳。
調子の悪いリハビリ機器。
飾られた星野富弘の絵。
利用者さんからいただいた写真や書。
スタッフの笑い声。
利用者さんの「ありがとう」。
その一つ一つに、人生の時間が刻まれています。
介護保険と共に走った23年。
本当に、終わったのだなと思うと、やはり一抹の寂しさはあります。
けれど今、私は“第三の人生”を歩いています。
会社譲渡が決まってから自宅を妻と二人でDIYし、2025年1月治療院を再開しました。
静かな空間で、目の前の一人と丁寧に向き合う時間。
晩年は一人の治療家に戻ると言うのがささやかな夢でもありました。
2月で64歳。
ようやく、やっと、心が静かになりました。
良いことも、悪いことも、
関わってくださったすべての方へ。
妻へ。
共に戦ってくれたスタッフへ。
そして、私を育ててくれた利用者の皆さまへ。
ただ、感謝しかありません。
本当にありがとうございました。
これからは一人の治療家として、
新たに治療院に来てくださっている方々の健康に携われていることに感謝し、
静かに、深く、
そして誠実に精進してまいります。
よろしくお願いいたします。



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