『揉み・ほぐす』と言う考察
- Yuichi Terauchi
- 7月19日
- 読了時間: 4分
ホテルやリラグゼーション店などでマッサージを受ける光景として、
術者「お客さん、凝ってますね。~」お客さん「そうなんです。硬いですか?」、術者「硬いですよ~揉んで、ほぐしましょう」
と言うのがあるあるの会話ですが、筋肉は揉んでほぐれるのか? 結論から言うとほぐれますが、堅い筋肉を揉むから柔らかくなったと言うのは科学的ではありません。そういう考えで施術してたとしたら悪化させる恐れもあります。
「さっぱりした―。ほぐれました~。先生 上手いね~」と言う自覚と体自体が受けている健康状態とは別の話と言う事になります。とは言え、これで飯を食っているプロは、患者さんの感覚と健康状態を一致させなければなりませんけどね。
色々な文献をまとめると
医学的なメカニズムは
1、血行促進効果
指圧・マッサージによって筋肉に適度な圧力が加わることで、血管が刺激され、血流が促進されます。
血流が良くなることで、筋肉に溜まった疲労物質や痛み物質が排出されやすくなり、酸素や栄養分が供給されやすくなります。
特に、血管の内皮細胞から分泌される「NO(一酸化窒素)」は、血管を広げる作用があり、指圧・マッサージによってその分泌が促進されると考えられています。
2、筋膜・筋肉の癒着の剥がし
筋肉の凝りや痛みは、筋肉やそれを覆う筋膜が、微細な損傷やストレスによって癒着して硬くなっている状態であることが多いです。
指圧・マッサージは、こうした癒着を物理的に引き剥がす効果が期待できるとされています。
「筋膜リリース」という言葉があるように、筋膜の滑りを良くすることで、筋肉の柔軟性が向上し、関節の可動域が拡大すると考えられています。
特に指圧の一定の圧力を点でかけ、筋膜を押下げ脱力すると言う手法は正に「筋膜リリース」そのものです。
3、固有受容器への働きかけ
筋肉や腱には「固有受容器」と呼ばれるセンサーがあり、体の動きや姿勢の情報を脳に伝えています。東洋医学的ツボ刺激と言う概念もあります。
指圧・マッサージによってこれらの固有受容器が活性化されると、体に負担の少ない動きや姿勢が自然と取れるようになり、痛みや凝りの軽減につながると考えられています。
4、リラクゼーション効果
マッサージは、単に物理的な作用だけでなく、心地よい刺激によってリラックス効果をもたらします。
自律神経のうち、血管を緩める副交感神経が優位になることで、さらに血流が促進され、筋肉の緊張が和らぐと考えられています。
逆にスポーツマッサージの様にこれから競技に向かう場合は、ある意味戦いに向かう訳ですから交感神経優位になる手法をしなければなりません。
たまに聞きますが、「揉んでもらっている内は眠くなったがその夜中々寝付けなかった」と言うのは、脳を興奮させてしまうマッサージを行ったのかも知れません。
目的によってマッサージの仕方を変えなければなりません。
注意点と「揉み返し」について:
「パン生地をこねるように柔らかくなる」わけではありません。
筋肉に対する指圧・マッサージは、パン生地のように物理的に柔らかくなるのとは原理が異なります。むしろ「軽い攻撃をして回復力を引き出す」という考え方もあります。
強すぎるマッサージは逆効果の可能性があります。強すぎるマッサージは、かえって筋膜や筋繊維を損傷させ、炎症を引き起こす「揉み返し」の原因となることがあります。揉み返しは、筋肉が傷ついているサインであり、好転反応とは異なります。
適切な力加減が重要です。筋肉に触れて「少し沈む程度の軽い力」でも、筋肉のセンサーに働きかけ、十分な効果が得られるとされています。
でも強いのが好きなんだよな~と言う方へ
強揉みは必要ないのですが、どうしても強いのがお好きと言う方には指圧がお勧めです。
ゴリゴリマッサージは前述のように筋筋膜に傷をつける可能性が大きくなりますが、垂直に点の圧力で筋筋膜リリースする指圧は、横揺れが無い分、筋への損傷がありません。
また、点圧はさほど強くなくても「ソコソコ」と言うトリガーポイントを押さえるために思っている程強い圧力を必要としません。
総じて、医学的に見ても、適切な指圧・マッサージは筋肉の血行を促進し、筋膜の癒着を改善し、固有受容器を刺激し、リラックス効果をもたらすことで、筋肉の緊張を和らげ、凝りや痛みを軽減する効果が期待できると言えます。ただし、その力加減や方法、解剖学的場所が非常に重要であり、無理な刺激はかえって悪影響を及ぼす可能性があることを理解しておく必要があります。

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